海と日本PROJECT フォーラム「海ゴミ問題に対してユースは何ができるか?(Youth for the Blue)」を開催しました
7月21日、早稲田大学の早稲田キャンパスで、「海ゴミ問題に対してユースは何ができるか?」をテーマにしたフォーラムを実施しました。
これは日本財団の「海と日本PROJECT」の助成の下、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)と共催で行ったもので、67人が参加しました。
最初に、特定非営利活動法人パートナーシップオフィス理事の金子博さんから基調講演として、海洋ゴミ問題の現状やこれまでの取り組みの経緯などについて説明していただきました。
その後、この問題に様々なアプローチで取り組んでいる団体の方々に事例発表をしていただくとともに、参加者同士で自分たちに何ができるかを話し合うグループワークを行いました。
【発表していただいた方々】
古澤 純一郎さん(古沢工業株式会社取締役/海さくら代表・発起人)
今村 和志さん(特定非営利活動法人荒川クリーンエイド・フォーラム理事/事務局長)
大藤 涼花さん(特定非営利活動法人国際ボランティア学生協会 東洋大学4年)
江幡 咲希さん(離島交流プロジェクト 早稲田大学3年)
斎藤 七菜子さん(三陸つばき 早稲田大学3年)
迫田 時秀さん(BRITA Japan株式会社)
石井 妃子さん(ミス・アース・ジャパン東京大会ファイナリスト)
高橋 瑠里さん(ミス・アース・ジャパン埼玉大会ファイナリスト)
基調講演や事例発表の中でポイントを紹介していきます。
■ゴミは均一にどの海岸にもあるわけではなくて、特定の場所にたくさん漂着している。2割の場所に8割のゴミが集中している。
■海ゴミのほとんど(7~8割)は、都市部での私たちの生活から出る
海のゴミは川から
川のゴミは街から
街のゴミは人の心が出している
■漂着ゴミに関しては、被害者でもあり加害者でもある
対馬では中国や韓国のゴミが多い。その後、対馬海流に乗って日本のゴミが多くなる。山形はちょうどバランスよく(?)いろいろな国のゴミが集まっている。
一方で、ハワイをはじめとする太平洋の島々や北米の西海岸には日本からの漂着ゴミが流れついている
よって出たところの責任を追及してもそれは合理的ではないので、漂着してしまった国が責任を持つというのが基本的な考え方。犯人捜しをしても改善はしない。
■有害物質を吸着するマイクロプラスチックの増大
本来は目で見えない微細なプラスチックをマイクロプラスチックと言うが、多くの人たちにこの問題を知ってもらうために、目に見える5㎜以下のものをマイクロプラスチックと呼ぶようにした。山形県庄内海岸などはマイクロプラスチックで覆われているような状態になっている。
プラスチック製品によっては、もともと有害な物質が含まれている上に、PCB(ポリ塩化ビフェニル)のような有害物質が付着することで、海洋生態系に大きな悪影響を与えることが懸念されている。
また、マイクロ化しなかったとしても、鉛をはじめとする有害な重金属を含んだ漁具や養殖用パイプなども問題になっている。
なので、できるだけ放置せずに回収することが重要。
■回収する(ゴミ拾いをする)際は、いかに楽しく、かつマイペースで参加してもらえるような形にするかが重要
海さくらのブルーサンタ、お相撲さんやサッカー選手との一緒のクリーンアップなど。
■プラスチックゴミには発生源対策と早期回収が必須
海に入ってしまったら回収は困難。
■散乱ゴミの上位10位
1位 飲料ペットボトル
2位 食品のポリ袋(菓子など)
3位 食品のプラスチック容器
4位 食品の発砲スチロール容器
5位 飲料びん
6位 飲料缶
7位 ポリ袋(レジ袋、食用品以外)
8位 飲食ペットボトルのキャップ
9位 買い物レジ袋
10位 タバコのすいがら・フィルター
■2009年に海岸漂着物処理推進法が制定
議員立法でできた法律。
【法律の内容】
○6つの基本理念
陸域を含めたごみの発生抑制、国際協力の推進…等
○関係者の役割分担
海岸線を管理しているのは都道府県だが、ゴミ処理をするのは市区町村。その調整など
○国の基本方針に基づいた県の地域計画を策定
○海岸漂着物対策活動推進員、団体の委嘱
○円滑な回収と処理
○発生の抑制
○NGO/NPO等との連携の強化
→※IVUSAとの連携の根拠
○環境教育の推進、調査研究への取り組み
○財政上の措置
■法律制定後の成果と課題
被害甚大な海岸における回収・処理は進展したが、発生抑制対策(普及啓発・環境教育)はまだ始まったばかり。年間予算約40億円もほとんどは回収・処理に使われる。
課題としては、
◯河川へのごみの流入抑制や漁業系ごみの削減等に対しては有効な対策がない
◯被害甚大な地域では、回収・処理の繰り返し(他国、他地域からのごみの海への流出が減らない)
◯河川流域と一体となった取り組み態勢が未構築
→ごみの管理意識の欠如から、川への流入は絶えない
■マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する科学的知見の増加
2000年代からマイクロプラスチックに係る研究論文が激増している。マイクロプラスチック問題の深刻さが世界的に共有されることで、G7等の国際会議でも取り上げられるようになってきた。
■2015年に出された調査によると、480万~1,270万トン(幅があるが、平均800万トンという数値がよく使われる)のプラスチックが毎年海に流出している。
その多くがアジアから出されている。2025年には2010年の10倍、2050年には魚の量を超えると推計されている。
■1950年頃から海に流れ出たプラスチック
総生産量 83億トン(1950年~2017年)
自然界に出る確率は1.8%~4.8%
仮に1.8%とすると 83億×1.8%=1億5千万トン
浮くプラスチックを半分と仮定すると7,500万トン
そのうち、6割が外洋に流出する⇒4,500万トンが表層に浮いているはずだが、実際、浮いているのは44万トンとされている(Erisken et al.,2014)
■日本近海に浮遊するマイクロプラスチックの量は、世界平均の 約27倍
海流の関係で流れ込みやすい。すでに多くの海洋生物の中に取り込まれている。
■対策法の改正に向けて
◯プラスチック製品の用途拡大と生産量の増加に対して、自然界へ排出される量を抑制するための制度設計が急務
◯世界的に深刻化している海洋プラスチック汚染への今後の対応において、現行法の改正が不可欠
◯海岸漂着物処理推進法から海洋ごみ対策推進法に変更していくことも視野に入れる必要がある。
2018年6月に法律改正
改正海岸漂着物処理推進法第5条
海岸漂着物対策は、循環型社会形成推進基本法等による施策とまって、 海岸漂着物等の発生の効果的な抑制が図られるよう十分配慮されたものでなければならない旨を追加
■循環型社会形成推進基本計画の下に「プラスチック資源循環戦略」の策定へ
「プラスチックとの賢い付き合い方」とあるが、「プラスチックの賢い減らし方」が必要(NPO・NGOからの提案)
http://www.jean.jp/recommendations%20for%20plastics%20reduction.pdf
■「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に合意
https://www.env.go.jp/press/files/jp/111827.pdf
その中でも「資源効率性」がキーワード。
■海洋ゴミ問題は「複雑な問題」であるということを理解することが重要
発生原因やその影響が多岐にわたり、多様なセクターが複雑に関係して合っている。
■根本的な解決の方法は、大量生産・大量消費・大量廃棄社会からの脱却(循環経済への転換)
そのためには、市民社会(NGO/NPO)の連携が必要不可欠